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2006/03/27

ミャンマーの柳生一族

ミャンマーの柳生一族(高野秀行:著 集英社文庫)
読了。“辺境ライター”高野秀行さんの新刊です。

冒険小説好きの者として、“辺境”という言葉を聞くと少々血が熱くなります。
未開のジャングル地帯、荒涼たる砂漠地帯、峻厳人を寄せつけぬ山岳地帯、オーロラと白夜の極寒地帯。
行ってみたいなぁと思えど、手間とかトラブルとか考えると、一生のうち一度も行く事はないんだろうなぁと思います。だいたい海外旅行の経験さえないし、今だに空港じゃ国内便乗るのでさえ、うろちょろ迷ってしまいます。
だから、やっぱり本でお話を読んだりするのが好きです。

高野さんの語り口、好きです。ほんとはすげーピンチな目に遭っても、それを面白おかしく書いてくれます。そこらへん、ほんとに凄いなと思います。
そして、その、きつい経験も面白おかしく書けるユーモアには、辺境地帯に対する優しいまなざしも含まれています。そう、高野さんは“辺境愛”に満ちあふれた方だと思います。

ほんとに私、世界有数の“便利な”場所、東京暮らしでも、ちょっとでも思い通りにならないとすぐトゲトゲした気分になって。目が三角状態になって。ユーモアをなくして。
愛がないですねぃ。
高野さんを見習わないとと思います。

本書はその“辺境ライター”高野秀行さんのミャンマー旅行記であります。

ミャンマー…。ミャンマーにちなむもの、思い浮かべてもあまり思い浮かびません。
「ビルマの竪琴」とか、しかし「ビルマの竪琴」もきちんと読んでないです。あらすじくらいは知ってるけど。子供向けに要約したのは小さいころ読んだ記憶がありますが。
あと、アウンサン・スーチーさん?民主化運動の人で、今は軟禁状態?って事は、今のミャンマーは独裁状態なのかなぁ、とか。

今、いちばん印象に残っているミャンマーは、かわなかのぶひろ先生の“繪”シリーズの一編「時の繪」です。かわなか先生がミャンマー旅行されたときにお撮りになった作品。真の意味で“豊穣”を感じさせる市場の風景、市場の人たち、子供たちの屈託のない表情。それをかわなか先生は敗戦直後の日本の、貧しかったけど人情味があった時代と重ね合わせて表現されています。ミャンマーに行ってみたいなぁと思った一編でした。いや、ほんとに行く根性はないけど。

そのミャンマーへ、高野さんは冒険小説作家の船戸与一さんの取材旅行のお供で旅をします。その行状記が本書です。船戸与一さんもファンですから、その、あまり明かされることのない船戸与一創作の秘密も暴かれる、と1冊で2度オイシイ本であります。

しかし、高野さん、ミャンマーに合法的に入国されるのは久しぶりだそうです。つまり密入国ばっかり。それでミャンマーの麻薬密造地帯、いわゆる“ゴールデントライアングル”に潜入していらっしゃるとか。凄いです。

で、軍事独裁国家体制の事を、幕府において隠然たる勢力を持っていたとされる柳生一族になぞらえ、『ミャンマーの柳生一族』という解題。
船戸与一一行の取材旅行も、ミャンマー情報部、つまり柳生一族のお目付けつきでの旅となったそうです。

そして、そのたびの行状を面白おかしく書く高野さんの筆も素敵です。そして、ユーモアにくるみつつも、ミャンマーの現状もきっちりと紹介しています。そして、その視点は大所高所からではなく、人々側からの視点であり。その視点も素敵です。高野秀行さん、偉い!と唸ります。

楽しく読み進みながら、ミャンマーの事、いろいろ知りました。政治の事も人情の事も。
いちばん驚いたのはミャンマーの人たちが読書家であるということ。貸本屋さんとか、古本を売っている露天もあるそうです。そういう国の人たちって、本とか読まないんじゃないか、そもそも字が読める人があまりいないんじゃないかとと内心偏見していて。第三世界などといって、最貧国とかいって、ほんとは私、そういう国の事を見下していたんじゃないかと。そういう部分も逆照射されて、日に当ててくれて。いい気分です。

そして、ミャンマーの人たちの人懐こさ。そこらへんがかわなか先生の「時の繪」に描かれた人々の姿とぴたりと重なりました。いい気分であります。

『ミャンマーの柳生一族』おススメであります。

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