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2005/11/15

萌える男

萌える男(本田 透:著 ちくま新書)
読了。
「電波男」に続く、「『萌え』とは何か?」「『萌える』ことは正しい」という事を解説した本田さんの本です。あと、「電波男」と「萌える男」の間に対談集「電波大戦」があります。「電波大戦」も読んでますが…。一気本でしたが、ちょっと書きそびれてます。ほんと凄い事がさらりと語られているのでどう書こうか力及ばず状態でした。

本書の論旨も「電波男」とあまり変わらないような印象を受けます。強いて言えば「電波男」は萌えてる人たちに対して、「萌える事は正しい、だからコンプレックスを抱かずに君たちは萌えていていいんだよ」と語る本であり、「萌える男」は『萌え』の外側の人たちに対して、「なぜ、『萌え』なのか?」「『萌え』は社会を改革していく力になりうるのだ」と語る本になります。

では著者の語る『萌え』とは何か…、ですが、これは本音を言えば本書にあたってほしいのですが。お値段も税込み735円だし、そう分厚い本でもないし、お買い上げ頂きたいのですが。どこまで理解しているかチト自信はないですが、簡単に要約すると。

まず、根本になる認識として、心理学者の岸田秀が唱えた「自我はそれひとりでは安定できない、自我を支えるものが必要である。」という説があります。人はその『自我の支え』を求めるものであると。
それがかつては、例えばキリスト教圏においては『神』、例えば日本においては『家』であったと。また『共産主義(革命)』もそうであったと。しかし、『神』は死に、『家』は解体され、『共産主義』も崩壊した今日。ここで『恋愛』というのが心の支えとしてクローズアップされてきたと。恋愛教(by小谷野 敦)とでも呼ぶべきものが生まれたと。
で、恋愛資本主義というのも生まれたと。“恋愛”の商品化・商業主義化が生まれたと。“恋愛”を巡るさまざまなアイテム、それを使いこなすための恋愛マニュアル本も売られ、「みんな恋愛できる。」「みんな恋愛しろ。」そして、「恋愛するためにはこれを買え。」となった。自我の支えとなった“恋愛”ですから、そのためには人はお金をつぎ込むのをいとわなくなったと。だから、“恋愛”商法は大ヒットとなったのだけど。

しかし、恋愛資本主義の弊害も生まれた。
ひとつは“恋愛”も消費されるものになった。つまり、“恋愛”は消費して無くなるものに、なおかつ、“恋愛”は「自我の支え」として必需品だから、人は常に新しい“恋愛”を求めるものになったと。そうして人が次々と“恋愛”を消費していくことが、お金の流れを生み出すと。しかし、そのために恋愛の絶対性は失われ、「自我の支え」として機能しづらくなってきていると。
もうひとつは恋愛弱者の発生。つまり“恋愛”(を消費)しまくってる人間とできない人間の二極分化が発生していると。
つまり、恋愛は万人を普遍的・永続的に救う手段とはなくなってきていると。

ここで『萌え』の概念が生まれたと。つまり、脳内、つまり自分のイマジネーションの中に恋愛相手を求める運動です。自分の脳内だから裏切られることもない、相手がいないと嘆くこともない、ちょっとだけの想像力さえあれば『萌え』は手に入ると。
そして、恋愛教じたい、“生身”の恋愛相手に『神』を求める行為であったから、所詮は無理があったと。だから『萌え』のほうが正しいのだと。

そういう感じになるかと。いや、やっぱりちょっと違う気もする。ゼヒ本書や「電波男」に直接あたってほしいのですが。

…………

しかし、本田 透さんはA・J・クィネルの冒険小説「燃える男」を読んでいらっしゃるのでしょうか?よく考えると「燃える男」は「萌える男」ですねぃ。長い戦場暮らしで心が死んでしまったクリーシィが、ボディガードを頼まれた少女の優しい好奇心によって『萌えて』心が癒されると。そしてあの悲しい出来事があるのだけど。でも、クリーシィは少女によって蘇った心を持って再び戦い、事件にケリをつけ、そして見つけた愛する人とともに平穏な家庭を築こうとするのがラストでした。(ほんとはあの後クリーシィは末永く平和に暮らして欲しかったのですが)
この「燃える男」の少女、チャーリーは私が読んできた冒険小説/探偵小説の中でナンバーワンヒロインであります。(古参の日本冒険小説協会会員はお手元の会報の私の文章でご確認されたし)そうなった理由が、必然が、「萌える男」を読んで理解できました。

…………

さて、現代人の失われた『自我の支え』の問題ですが。ネット右翼などが最近増えているようです。つまり、空疎化してしまった『サヨク』の言葉は届かず、もちろん『恋愛』も手に入らず、、『萌え』にも行かず、かなり悪い形で『国』を自我の支えとして選んだ人たち。そういう人たちが最近増えていて。しかも、彼らにとってそれはルサンチマンのはけ口でもあり、だから、彼らのウヨク思想の表明は他国への攻撃となって現れていて。
だから、そういう部分もあるからこそ、今こそ『萌え』が大切かと。

従来からの「オーソドックスな」人たちも、こういう時代の流れを見て欲しいなと思います。だから、「萌える男」はたくさんの人に読んで欲しいと。
大谷明宏さんなんかはワイドショーで『フィギュア萌え族』などという珍語を開陳している暇があったら「刑事(デカ)と新聞記者(ブンヤ)のデスマッチ・シリイズ」の続編を書いて欲しいなぁと私なんかは思っているのでありますが…。

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