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2005/10/29

楽園の眠り

楽園の眠り(馳 星周:著 徳間書店:刊)
読了。馳 星周さんの本を読むのは久しぶりでした。

男。刑事。奥さんは出て行き、幼い息子とふたり暮らし。ふとしたきっかけから男は息子を虐待するようになる。
少女。父親の暴力に怯え。家に居つかなくなるままにDQNの彼氏の子を宿す。彼女は彼氏と子供とで幸せな家庭を持つことを夢見ている。しかし、少女の妊娠を知った彼氏は彼女の腹を蹴り、彼女を流産させる。
男の息子は男の家から逃げ出し、少女に出会う。虐待の傷跡を見た少女は、流産した子供の替りにその子とふたりで家庭を築くことを決意する。
追う刑事、逃げる少女。さらに心に闇を抱える者たちがふたりに絡んできて…。というお話です。

携帯メールを使った丁々発止のやり取り、少女に追いついては逃げられる男。醜い、だけど切実な様々な欲望。読ませます。

馳ノワールの世界、今までいくつか読んだのだけど。
それは例えばヤクザの世界が舞台で、最後の最後は別の世界のこと、で、どんなにやりきれ ないお話でも、読者である私は逃げ道があったのだけど。自分がヤクザの世界に足を踏み入れる、その世界の住人になる事はまずありえない。根性なしだし。だ から、違う世界のお話と割り切って読むことができたのだけど。違う世界のお話し故の魅力もあったのだけど。

でも、今回のモチーフは児童虐待。それは私のすぐそば口を開けている、そうなってしまうかもしれない世界。私はチョンガーだけど。
いや、私が児童虐待を受けたという話ではありません。私の親はむしろ大甘の方だったと思います。
ただ、私は自分の心の中に闇がある事を知っています。ドロドロとした暴力衝動が心の底にある事を知っています。通り魔事件の記事など読むと心がざわつきます。その犯人たちは私の中にもある、決して越えてはいけない一線を乗り越えてしまった人達だと思っています。檻…。

私が家庭を持ち、子供を持つようなことがあれば、そういう暴力衝動が子供に向いてしまう事もあるかも、と思います。だから、登場人物たちの児童虐待の暴力衝動、ヒリヒリとよく分かります。
そして、自分の心の底に闇がある事を自覚しているからこそ、そこそこにこやかにしていられるのだと思っています。

だから、本書は読ませるけど、グイグイとは読めませんでした。読む私の心もざわついてきて、ときどき読む手を休めないといけませんでした。
児童虐待、家庭内暴力を対岸の事として読める人だったら、その人は幸いです。

いや、なべて人の心には光と闇があるものだと思います。それを自覚しないといけないと思います。そうしないと、闇から出た衝動を光と思い込んだり、目をそらしたせいで肥大した闇に逆に飲み込まれたりしたりするのではないかと思います。

少女の姿。父親から、そして彼氏から暴力をふるわれ。自分は決してそういう事はしないと心に思っていて。しかし、追い詰められるとふとしたきっかけ で、男の子に暴力をふるう姿、一緒に温かい家庭を築こうとしている男の子に暴力をふるう姿。それが痛いほど分かります。心が震えました。
伊丹十三 の「タンポポ」という映画だったかなぁ。山崎 努が演じる、男やもめのトラック運転手が「俺はひどい家庭で育ったから、所帯を持つ時、暖かい家庭を築こうと思った。だが、気がつくと俺はひどい家庭を 作ってしまってた。」というような台詞を言うシーンがありました。映画館でその台詞を聞いて、私は愕然としました。痛い程よく分かる、心に刺さる台詞でし た。

「楽園の眠り」、おススメであります。ただ、本当に最後まで救いはない小説です。
ご覚悟を。

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