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2005/10/25

少女地獄

少女地獄(夢野久作:著 角川文庫)
読了。ある意味“基礎教養”みたいな本ですが、今ごろになってやっと読みました。

夢野久作は『ドグラ・マグラ』を読んでます。ストーリーらしき物はまったく思い出せないのですが、個人的にちょっとつらい、後悔と共にしか思い出せない、思い出の場所が出てきて、そっちの方が読んだ時の記憶として残ってます。

『少女地獄』は夢野久作の短編集。「少女地獄」「童貞」「けむりを吐かぬ煙突」「女坑主」の4編が収められています。

「少女地獄」。書簡形式の短編小説。「何んでも無い」「殺人リレー」「火星の女」の3つのお話から成っています。
「何んでも無い」はある看護婦のお話。彼女を雇っていた病院の医師の手紙という趣向。その看護婦・姫草ユリ子は愛想がよくて、看護婦としての腕前もあって、周りから好かれる性格。それなのに自分の出自に嘘をついていて、その嘘を上塗りしているうちに身動きができなくなって。そんな事しなくても腕のいい、かわいい看護婦なんですが。なんで嘘をついてしまうのかなぁと思いました。
「殺人リレー」はバスの女車掌のお手紙。女車掌を騙してねんごろになって、五月蝿くなると殺してしまう運転手。彼女はその運転手の正体を知りつつ惹かれていくというお話。そういう機微って解かります。でも、解かるけど、どうしてそういう風になってしまうのでしょうか。人の心の不思議さ。
「火星の女」。ある女子校生の遺書。彼女は背が高くて、それにコンプレックスを持っていて。で、死ぬ理由ができたのをきっかけに自死を選ぶと。しかし、まぁ、ヴァージニティに厳しかった昔というのは…であります。今時なら背の高いのにそうはコンプレックスは持たずにいられるのになぁと、それも思いました。

「童貞」は、己の頑なさのために乞食に身をやつした芸術家の男、行き倒れになるその寸前の、夫殺しの嫌疑をかけられて逃げているラシャメン(西洋人相手の情夫)との交錯を描いた作品。
「けむりを吐かぬ煙突」はちょいと猟奇な作品。亭主の死後、莫大な遺産を受け継いだ未亡人。芸術関連のスポンサーなどをやって、社会的地位も高いその女性が実は、という作品でした。
「女坑主」。女優あがりである炭鉱王の妻となった女性、亭主の死後、その炭鉱会社を告いでいる、と。そこにやってきた運動家を残酷に処する彼女の姿。

作中“末期資本主義”という言葉が出てきて。いやもう戦前に資本主義は末期と思う人がいたのだなぁと。いや、当時は“共産主義”に変るべき末期資本主義だったのかもしれないけど。

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