« 上野下町風俗資料館 | トップページ | 彼はとてもいいことを書く »

2005/09/07

鉤爪の収穫

鉤爪の収穫(エリック・ガルシア:著 酒井昭伸:訳 ヴィレッジブックス:刊)読了。
ほんとに久しぶりの探偵小説でした。
いや、チト毛色の変った探偵小説だけど。
つまり、この小説の探偵、ヴィンセント・ルビオは恐竜なのです。

実は恐竜は絶滅していなかった!
現代に生きる恐竜たちはその正体を隠すため人間の着ぐるみをまとい、人間と共に生活しているのです!
あの政治家もこの映画スターも実は恐竜なのです!!
というのがこの作品の世界観。

恐竜たちの社会。その設定。
彼らは嗅覚が敏感で、また、香腺という組織を持っていて、ひとりひとり違う匂いを発していると。だから、姿が見えなくても誰か判る。
恐竜たちは人間社会で暮らす時はヒトの着ぐるみを着ている。着ぐるみを取り替えて変装したりできる。でも、恐竜同士では匂いが判るから変装はやりにくい。
彼らはおのれの鉤爪に誇りを持っていて。戦う時も専らそれを使う。銃は“ヒト”の武器として、銃を使うのは恥ずべき事とされている。
もちろん、人間に恐竜の存在がばれることは最高のご法度。だから、恐竜の死体消去用の分解パウダーなんていう代物さえある。
恐竜は一種類じゃなくて、何種類もいる。中には互いに殺しあうほど反目している種族もある。
恐竜社会には評議会というのがあって、規則違反をした恐竜を罰したりする。
恐竜はアルコールには酔わない。恐竜たちにとってのアルコールやドラッグはハーブである。人間にアル中のある如く、恐竜にはハーブ中毒がある。
てな感じです。この設定がいろいろお話に絡んできます。

主人公はヴィンセント・ルビオはもちろん恐竜、ヴェロキラトプルという種族。恐竜相手のしがない探偵をやっている。フランチャイズはロサンジェルス。バーゲンでアルマーニのスーツを衝動買いする程度のお洒落。んで、元ハーブ中。
なんかむちゃくち正当”ハードボイルド”探偵な設定です。彼が恐竜である事を除けばね。

本書『鉤爪の収穫』は“鉤爪”シリーズは3作目。第1作の『さらば、愛しき鉤爪』は読みました。とても面白かったです。
で、先日、何か面白い本はないかと久しぶりに(ネットじゃない)普通の書店に行って、文庫本コーナーをうろついていたんですが。この鉤爪シリーズが平積みになっているのを見つけました。それで思い出して。
『さらば、愛しき鉤爪』のあと、『鉤爪プレイバック』が出ているみたいで、3作目、本書『鉤爪の収穫』が最新刊みたいでした。2作目で未読の『鉤爪プレイバック』を読むのが筋なんでしょうけど、奥付の日付が2005年、つまり今年の日本冒険小説協会大賞対象作品の『鉤爪の収穫』のほうから読む事にしました。

鉤爪シリーズのタイトルは探偵小説の名作から取られているみたいで。第1作の『さらば、愛しき鉤爪』と『鉤爪プレイバック』はレイモンド・チャンドラーの『さらば愛しき人よ』『プレイバック』のもじりですね。本作『鉤爪の収穫』はダシール・ハメットの『血の収穫』のもじりみたいです。
ただ、『鉤爪の収穫』は原題が"HOT AND SWEATY REX"で、『血の収穫』の原題が確か記憶によると"The Red Harvest"だから、原題レベルでのもじりじゃなくて、訳者さんのアイディアのようですね。

『血の収穫』はずいぶん昔に読んだ筈ですが…。所謂“ハードボイルド小説”を語るためには外せない、基礎教養みたいな本ですし。鉱山町にやってきた探偵が対立するギャングの抗争を唆し、共倒れにするというストーリーだったと記憶しています。いや、これも昔読んだ探偵小説ガイド本からの受け売りですが。実際読んだ『血の収穫』の事は憶えてなくて、ガイド本の紹介は憶えてるのね…。いつか再読しなきゃ。

『鉤爪の収穫』。ヴィンセント・ルビオはロサンジェルスのギャングのボスのフランク・タラリコから、フランクとの交渉のためにロサンジェルスにやって来たフロリダのギャング団の幹部、ネリー・ハグストロームの尾行を依頼される。さらにルビオはフロリダに戻ったネリーを探るようにフランクから無理やり命じられ、フロリダに向かう、そして、そこで起こるギャング団同士の抗争、それに巻き込まれたルビオは…。というお話です。
確かに『血の収穫』に似たストーリーです。『血の収穫』はほとんど忘れたので、どのくらい似てるかは判らないんだけど。

過去に遡る描き方がとても良かったです。フロリダで再会した旧友、元・恋人との思い出話とか。
ハードさ、気位、そしてセンチメンタリズム。久しぶりに正統“ハードボイルド”小説を読んだ感覚です。主人公、恐竜だけど…。

ほんとに面白く読みました。久しぶりに電車を乗り過ごしたくらいです。“乗り過ごし本”でありました。
『鉤爪の収穫』おススメです。
『鉤爪プレイバック』も読まなきゃね。

|

« 上野下町風俗資料館 | トップページ | 彼はとてもいいことを書く »

コメント

文庫でも600ページを越す本は1000円以上するんですね・・・。「文庫=お手軽価格」、自分の中のイメージが崩れました。

投稿: よっちゃん | 2005/09/08 13:04

>よっちゃんさん

本は売れなくなっているそうです。“活字離れ”以外にも、ブックオフとかの中古書店の普及、それから図書館がベストセラー本をたくさん入れるようになった事も原因だそうです。「それは図書館の本来の使命じゃないんじゃないか。」、「いや、ベストセラー本をたくさん置いて利用者を増やす事は良い事じゃないか。」という議論も起きているみたいですが。
売れない、採算が取れなくなるから値上げする、更に売れなくなる、の最悪スパイラル状態みたいです。

ただ、会長はいつも「本は千円ちょっとのお金で、僕たちを色んな所に連れて行ってくれる。砂漠の荒野にも、原生林のジャングルにも、海中深く眠るタイタニックの側にも。」というような事をおっしゃっています。そういう意味ではコストパフォーマンス高い訳だけど。

そうそう。よっちゃん。939DUAL-SATA買ったら、OS再インストールなしでM1689ボードから移行できるたどうか教えてくださいな。マザーボードドライバ類は共通で使えるんじゃないかと思うのですが。再インストールが必要かなぁ。
録画にPC使っているので、ダウンタイムが気になります。K8U導入の時もいくつか番組を録り損なって悔しい目に遭ったのですが。

ではでは。

投稿: BUFF | 2005/09/09 09:45

私はこのサイトを参考に致しました。

http://dennou.stakasaki.net/noinst_mbchange-j.html

私も939Dual-SATA2の場合はOSの再インストールは必要ないと思いますねぇ。同じALiのチップだから。

投稿: よっちゃん | 2005/09/09 15:35

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/92510/5825610

この記事へのトラックバック一覧です: 鉤爪の収穫:

« 上野下町風俗資料館 | トップページ | 彼はとてもいいことを書く »